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執筆者であり僕の友人でもある、「大」さんこと、朝倉さんのご厚意により、
ドライフライフィッシングマニュアルを掲載させて頂きました。


●ドライフライ・フィッシングマニュアル
                               執筆者:朝倉大成氏

はじめに

 きっと最初のフライフィッシングとの出逢いは「ドライ」ではないかと思います。私も最初はドライでありました。(^^; あの頃は、ようやく日本でフライが市民権を得た時期であり、私の住む東北の地には、プロショップすら皆無に近い状況のなか、釣雑誌のグラビアをフライ・フィッシングの1シーンが飾っていたのを憶えています。

 よくフライ・フィッシングは、「プロセスの釣り」であり釣果にこだわるより「過程を楽しむ釣り」という講釈が書かれていますが・・・ほんとうにそうなんでしょうか?「釣りの本質」とはなんでしょうか?各人の信ずるものは違へど「結果として魚を釣り上げる」ことであろうと私は考えています。釣果の無い釣りなどは有り得ないのです。

 鱒釣というカテゴリーの中でドライフライほど煩雑でエキサイティングな釣りは無いと思いますし、苦労の割には釣果が上がらないのも事実だと思います。また、釣果が上がらない故に高価なタックルの収集やフライタイイングに没頭することになります。事実私自信も初めは、カーボンロッドに飽きたらずバンブ-ロッドを買い、山のように沢山のフライを巻き、釣果を得ることよりも、タックルやフライタイイングにこだわっていたのですが、よくよく考えるとそれらは魚を釣るための手段であって、フライフィッシングを目的とするものではないのです。

 せっかく高価なタックルを揃え、フライを綺麗に沢山巻いたのなら、それを使って頬が緩んでしまうような釣果を得られるようにしたいものです。このマニュアルでは、実践から得られる現実的なことを紹介することによって、ドライフライを愛する多くのフライフィッシャーがより幸せになれればと思っております。

 また、このマニュアルは私の経験による独断と偏見にて執筆されておりますので、お読みになられました方々には賛否両論あろうかとは思いますが、ご了承いただきますようお願いいたします。

【1】 ターゲット

 国内で誰でも出逢うことのできる「岩魚」「ヤマメ」「レインボー」を対象として説明していきたいと思います。

 実際にはターゲットとして「鯉」「オイカワ」「ハス」「ブラックバス」等も身近に狙うことができますが、全神経をピィーンと張りつめてティペットの先端に結ばれたフライに感覚の全てを集中するトラウトフィッシングが私個人はドライの醍醐味であろうと感じています。

 ドライで鱒達をヒットするためには「生態を知る」等と良く言われますが、実際には「釣りは魚に教わるもの」であろうと思います。その教わるものの中に生態だの水況だのという内容があるわけで、実際には狩猟本能と行動力がターゲットを手中に収める最大のポイントでなかろうかと思います。(^^;
 しかしながら敵を知らなければ攻略は成功しませんから、ターゲットとする鱒について最低限の知識を持ち合わせることは必須要素と考えます。

<鱒特有の性質>

 あらためてお話しする内容ではないのですが、鱒はご存知のように冷水性の魚種であり、動物性の餌を常食とし渓流から本流や湖水そして海までの広範囲に生息しています。が、本来鱒属は降海型であり産卵の為に河川へ遡上するという性質があるために、陸封型の岩魚やヤマメも増水時や晩夏以降には上流へ遡上する傾向があって、シーズン前半と後半では付場がかわってきます。
 また、婚姻色が体側に現れると食餌行為は極端に少なくなり、鼻先に現れた餌を反射的に捕食する程度となりますので、春先のようにかなり離れた場所から飛び出すといった状況は極端に少なくなってきます。そのため、如何に正確に鱒達の付場や遡上道を見極めてアクションを与えるかが釣果に影響を与えることになります。

<群れをなす>

 岩魚は群れをなす習性を基本的には持っていません。大型の場合は居付きと呼ばれ特定の場所を縄張りとしている場合が多く、湖水でも河川でも点々と回遊することはまず無いと考えて良いです。
 ですから、大物を目撃したりバラしたりした場所には必ず移動せずに付いていると考えて間違いないです。(但し、他人に釣られていなければですが…)
 但し、洪水で川が変わってしまった場合や、秋の遡上シーズンには上流に移動をしますので、滝壷や堰堤下のプールなどといった平水時の遡上止めに溜まり、群れをなして泳いでいるのを見かけますが、水位の変化にともない単独行動となります。

 ヤマメは基本的に群れをなす習性を持っていて、湖水に生息するヤマメ(サクラ鱒)等は群れとなって回遊をしています。回遊は岬の先端を渡り歩くように回遊し、入り江の奥深くへは特定の条件が揃わないと入って行くことはあまりありません。特定の条件とは、増水時/産卵期/ワカサギの接岸期(早春の雪代流入前後)等であり、この時期は大型がバックウォーターへ入ってきます。
 川の場合も同様で、小型は頻繁に流れを下り大型は増水時に流れを上り移動を繰り返し同じポイントに居付くことは無いと考えて良いでしょう。

 レインボーの場合も群れとなって回遊する性質を持ちますが、やはり居付きとなる大型もいます。ただ、悪食極まりないので簡単に小型は釣られてしまい、東北では個体数が極端に少なく、特定の水域でしかターゲットとしての価値はありません。
 東北では宮城県が、レインボー放流に力を入れているようで、県南の河川ではたいへんよく見かけることができます。

<ドライ・フライとしてのターゲット>

 
ドライのターゲットとして、エキサイティングなやり取りができるのはヤマメ&レインボーでしょう。岩魚の場合は、重さがロッドへ伝わり底へ底へと抑え込むような感触であるのに、ヤマメ&レインボーは流れにのりジャンプしながら走るため、フィッシャー達の胸が高鳴るのはいうまでもありません。ヤマメやレインボーは流れに付く魚であり、岩魚は名前の通り岩に付く魚であるのが一般的ですが、最近の放流事業やハイプレッシャーの連続により、岩に付くヤマメや流れに付く岩魚も多く見かけます。

 本来ヤマメは活性が高くなると、瀬中に付き流心を縄張りとしていますので、ドライにはうってつけのターゲットとなり、盛春には面白いようにドライに反応してくれるのですが、プレッシャーが高い河川等では石裏や葦際に付き簡単にはドライで引き出せない状況が一般的な最近の有名河川のように思います。

 人それぞれにドライへの思い入れがあって、ハイプレッシャーのポイントで高度なテクニックと繊細なタックルで確立の極端に低い釣りをするのも一興ではありますが、私はやはり「沢山釣れる釣り」「簡単に釣れる釣り」「大物が釣れる釣り」を信条としてフライを楽しみたいと思っています。

 ターゲットというと「魚」を考えてしまいますが、楽しい釣りをするには魚のいる所でなければ釣果はありませんから、獲物より「フィールド」と解釈すべきかもしれません。
 楽しい釣り(釣果がある釣り)をする為には、狙った魚が生息している場所で釣りをすることが必須条件です。特にドライの場合にはその傾向が最も強く、魚がいても水面を意識していなければ魚がいないのと同様です。

【2】 ドライフライの世界へ

 フライフィッシャー達の「ドライフライ・・・」への思い入れは、きっと水面を割って魚体を翻して鱒がフライにアタックしてくることでしょう。
 それも自分で作ったフライが狙ったポイントを絵に描いたように通過し、思惑通りに魚が飛び出せば、それはもう空にも舞い上がる気持ちと思いますし、そのときヒットした鱒がロッドを弓なりにすれば気分は「最高!最高!絶好調!」。

 日本のフィールドで楽しくドライフライでの釣りをするためには、いくつかの注意するポイントがあります。

1.使用するタックルはライトタックルであること

まれに本流筋で50cmなんてサイズもヒットすることがありますが、一般的にヤマメも岩魚もドライにアタックするサイズは30cm以下と考えて問題ありませんので、このサイズで引き味を十分に楽しみロッドを半月にするタックルを選択すべきです。オーバーパワーのタックルでは、魚の重みすら感じることはできません。

一般の渓流では、以下の仕様が私のお奨めであります。

ロッド   :#2〜#4のティップアクションロッド
ライン   :DTの場合は#2〜#4、WFの場合は#3〜#5のフローティングライン
リーダー :5x〜6xでファーストテーパー
ティペット :5x〜7x
フライ   :#10〜#18
        止水でなければ、ミッジサイズのフライは不要と感じています。


2.必要以上のロングキャストをしないこと


本流であれ源流であれドライでのキャストは15ヤードもキャストできれば十分ですし、無用なロングキャストはラインが水面を叩いたり、ラインの音でポイントの鱒を散らしてしまう可能性が大きいし、バックの木の枝やブッシュに引っかけてしまうなんてことになります。
また、それ以上にラインが水面の接する長さが長い程、流れによるドラグがかかりやすくなります。
流れが複雑に揉まれる渓流では、通常10ヤード程度ラインを出すとドラッグコントロールテクニックがたいへん難しくなります。

「敵とのスタンスは必要最小限の距離を的確に確保すべき」

3.不要なウェーディングはしないこと

不用意に流れに立ちこむと、場合によっては前後する全てのポイントを潰してしまうことになります。特に自分の気配で魚が走った場合は絶望的であります。

ロングキャストより、岸から障害物を回避してプレゼントするテクニックのほうがより重要です。

4.アプローチの配慮

特にドライでの釣りは、水面に注意を注ぐ鱒をターゲットとしている訳ですからフィッシャーマンの気配に対して想像以上に敏感となっていますので、不要なウェーディングとも共通する内容ですが、ポイントに近づく場合は木バケ石バケ薮バケが重要となります。
薮をガサゴソ音をたてて川面に近づけば、そのポイントは潰れますし、水面に張り出した木の枝を揺らせば、その下や付近のポイントは潰れてしまいます。

また、水面に影を落とすことも同様に釣れなくする重要な要素です。

自分の姿を悟られない配慮を常にしてください。国道に面した川等の場合、アプローチに対してシビアでない場合がありますが、これは例外であり数の比較で考えると静かなアプローチに軍配が上がることはいうまでもありません。


5.ウェアの配慮


じつはこれが重要なんですよぉ。
プロショップに行くと、カラフルなシャツや帽子やベスト、はてはウェーダーからシューズまでハデハデの原色なんてのを見かけます。
昔から言われるように渓流での釣りは木バケ石バケが基本と思います。水面に自分の影が落ちただけで警戒心を抱く鱒達を相手にするのですから、地味なものを身に付けるべきと考えます。

<ドライフライでのポイント>


「初心者達の誤った解釈?・・・」

一般にドライは水面にドラグフリーでフライを自然に浮かべて釣るため、ポイントは「フライが沈みにくい流れ」「穏やかで平坦な流れ」といった緩やかな流れを最良ポイントと考えがちですが、活性が高ければガンガン瀬等の「荒瀬」、落ち込み等の「巻き返し」や飛沫をかぶる「流出」のように、フライを沈める要素が強い場所程ヒットする確率が高くなります。(但し、条件により絶対ではありませんが・・・)
 フライを長い時間水面にドラグフリーで保持できない代わりに、魚の飛び出すスピードは電光石火の如き早業となりますし、そんな場所は多くのフライマンが嫌い攻めない場所でもあるので逆に釣りやすく魚も警戒しない場合が多いといえます。

「岩魚とヤマメのポイントは違う?・・・」

 少なからず共通する部分はあれど、渓魚であれば岩魚もヤマメもレインボーも「みぃ〜んな同じ」ではありませんよ。


岩魚の場合   :散在する石に張り付くように

            落ち込みの白泡の下に

            巻き返しに

            倒れ木の中に

            岸のエグレの中に

            瀬や淵のヒラキに

                 ・

                 ・


ヤマメの場合   :流心の底に

            流心の脇に

            白泡の両側に

            白泡の切れ目に

            散在する石が作る流れの変化に 

                 ・

                 ・


暗い場所より明るい場所を鱒達は好むようです。
ヤマメは明るい陽がさす瀬を好み岩魚は木漏れ日の中の日陰を好むんです。

「ポイントを攻略するテクニック・・・」

 岩魚を釣るためには、緩流域で障害物があって日の光が直接当たらない場所に好んで 付いていますので、そんな場所を中心に狙うことが大切です。そのため、キャスティン グも障害物等をクリアするテクニックが必要となってきます。
 一般にトリックキャストというと流れによるドラグを攻略するキャスティングテクニ ックと考えられますが、渓流でのFFで障害となる多くは「岸に生い茂る葦」「張りだ した枝」「潅木のトンネル」「バックの障害物」等をクリアするテクニックが非常に重 要となると感じています。

「岸に生い茂る葦のクリア・・・」

 私が好んで釣りをするのは里川であり、盛夏ともなれば岸辺は2m程の葦で覆い尽く されています。この葦をクリアする為には、ある程度の川幅があるのであれば、9ft 以上のロングロッドを使用してバックをクリアするのが一番簡単なのですが、川幅が極 端に狭い場合は7ft以下のショートロッドを使用しなければ「提灯釣」となって本来 のFFではなくなってしまいます。
 こんな時に多用するのが「スティープルキャスト」で、バックキャストを空に向かっ て高くあげて障害物をクリアすることができます。このキャストは簡単にマスターする ことができ、渓流等では必要不可欠なテクニックの一つでもあります。
 フォルスキャストは他のキャストと同様ですが、バックキャストはオープンリストで ロッドを上に突き上げるようにすると簡単に実現できます。

「張りだした枝のクリア・・・」

 これは、いろんな状況が考えられます。これからプレゼントしようとするポイントの 上に枝が出ている場合、自分の真上にある場合、バックキャストする後方にある場合等 ですが、サイドキャストやリーチキャストを使ってバックキャストやフォルスキャスト の回数を極力減らすことが重要となります。できれば、バックキャスト2回フォルスキ ャスト1回でフィニッシュするくらいに考えれば良いでしょう。フォルスキャストの回 数を減らせば木の枝をヒットする確立も減ってきます。


「潅木のトンネルのクリア・・・」

 トンネルの隙間が50cm以下となるとちょいとキツイのですが、1m程度の空間が あれば楽勝であります。このようなポイントは餌釣師はもちろんのことだぁ〜れも釣っ てない場合がほとんどであり、フライが確実にプレゼントされれば多少のドラグがかか ってもかなりの確立で鱒がアタックしてきます。
 このようなポイントでも、バックにフリースペースがあるのであればサイドキャスト で水面ギリギリをキャストすればなんとかなりますが、バックがとれない場合が多いの で荒業にて攻めることになります。
 はじめに必要な長さのラインを引き出し、フライを下流に流しておいてラインが伸び きったら強引に上流方向にロッドをあおり、ラインをピックアップしてフォルスキャス トなしでフィニッシュします。すなわち下流に流したラインはバックキャストと同様の 意味があり、流れに引かれたラインはバックキャストでホールされた伸びきったライン と同様の働きをします。
 しかしこの方法の場合フライが沈みやすいので、使用するフライは浮力重視の大きめ を使用すると良いでしょう。


【3】 ドライフライ

 最近はプロショップ等も増え、各種のフライを目にしたり教えてもらえる機会が増え ましたし、パターンブック等も多く発刊されているので、詳細はそちらに任せて簡単に 私の感じていることをお話しします。

 賛否両論あろうかと思いますが、渓流で使用するフライは水面がフラットな場合を除 いて以下の2つの要素が重要と私は感じています。

1.視認性が高いこと

フライが今何処を流れているのかが判らなければ、ドライフライの楽しみの一番 美味しいところがなくなってしまいます。
また、フライにかかるドラグの状況やアタックする鱒を的確に掴むためには良く 見えるフライが必須条件でしょう。

よくビギナーから「フライが何処に落ちたか分からない」という話しを聞きます が、これはフライが落ちたところを見ようとするからであり、見ている所にフラ イを落とせば見失うことはありません。
言い替えれば、見ている所(狙った所)にフライを落とせるキャスティングテク ニックは最低限必要ということになります。

これはさほど難しいことではなくて、見えている視野の中心にフライが落ちれば 良いわけですから、ロッドを視線と水平に振り真っ直ぐにフィニッシュしてあげ れば簡単なことです。
要するに、フライの落下ポイントとロッドティップを結ぶ線上をラインが走れば 良いわけですからネ.


2.浮力が高いこと


渓流は流れが複雑で、流れが右へ左へそして上流へ下流へと揉まれているのでフ ライはたいへん沈みやすい状況に置かれることになります。
そのためにイミテーションよりも浮力を重視すべきと思います。
浮力を増すためには「ハックルを厚く巻く」「ボディーに浮力材を使う」「表面 張力のあるフラットウィングやファンウィング」を使ったり、フロータント等の 浮力剤を使う等の方法がありますので、フィールドの状況に合わせて使いたいも のです。

沈めたフライはもうその時点でドライではなくなってしまいます。


 渓流で使いやすいフライは、今までの経験から判断して次のパターンが良いと思いま す。

「パラシュート・フライ」

一般にウィングを軸としてシャンクに水平にハックルを巻いたものであり、水面 にハックルが突き刺さらないために、有効に表面張力を利用して長い時間水面に フライを保持できる特徴がある。
イミテーションよりも機能重視したパターンと言えます。

「ヘアーウィング・フライ」

ハックルではなく、ムースやエルク等のヘアーを使ったフライで、マテリアル自 他に浮力があり、ハックルとの併用でなお一層の浮力を得られるとともに、視認 性という点でもハックルよりも目立つものをつくれる。

「ボディーハックル・フライ」

シャンク全体テール側からヘッド方向へハックルを螺旋状に巻いて毛虫の様なボ ディを持ったフライ。
これは毛虫が水に浮くのと全く同様の効果があります。


【4】 キャスティング

 ドライでのキャスティングは、ウェットやストリーマとは多くの点で性格が異なった ものとなります。それは、ウェット等の場合はフライ沈めるためのキャステングである のに対してドライのそれは浮かす為のものであるからです。フォルスキャストにより濡 れたフライの水を切り乾かし浮力を回復させ、フィニッシュはフライをソフトに水面に プレゼントするということを意識しなければなりませんから、フォルスキャストはライ ンスピードをあげて早く行い、フィニッシュはラインパワーを殺してフワッとしてあげ ることが必要です。

 キャスティングには、フォールを行う「シングルフォール」「ダブルフォール」とフ ォールを行わない方法があります。ホールキャストは、ラインパワーのアップに大きな 威力があり「向かい風」や「ロングキャスト」に有効なHS/HLには必要不可欠なテ クニックの一つとなります。
 但し、フォールは必ずしも大きなアクションで行う必要はなく、その時々に応じたパ ワーを引き出せる範囲であれば十分です。慣れてくれば意識することなくフォールをし たりしなかったりと使いこなせるようになれます。
 また変わり種では、ロールキャストというのがあります。ラインのピックアップやウ ェット等では多用されます。

 それと、もう一つ重要な、ループのコントロールがあります。ループを広くしたり狭 くしたりすることによって、ラインスピードを上げたり、プレゼンテーションをソフト にしたり、向かい風の抵抗を減らしたりできるわけです。

 フィニッシュでは、ストレートでプレゼントする他に以下の代表的なテクニックがあ り、渓流ではトリックキャストと呼ばれ障害物クリアやドラグ対策に多用されます。

1.スラックキャスト(スネークキャスト)

名前のとおりラインに水平方向のスラックを意識的に与えて、たるませた状態で ラインを水面に着水させ、ドラグ発生までの時間を引き延ばします。
これは、複雑な流れの中にラインを落とさなければならない場合に使われ、ライ ンを空中に保持できないときは有効なテクニックです。

フィニッシュ時にロッドティップを意識的に左右に振ることによりラインにスラ ックが入り蛇のようにクネクネとラインが曲がって着水します。
ここで注意しなければならないのは、ラインのたるみの分フライの着水位置が手 前になるので、その分を考えてラインを出しておかなければなりません。

2.S字キャスト

スラックキャストの1つと考えて良いでしょう。字のごとくS字状に大きくライ ンをたるませてラインを水面に着水させます。
流心をまたいでポイントを攻略する場合、上流方向に大きくラインをたるませて ドラグ発生までの時間稼ぎをするために使用します。

フィニッシュ時にロッドティップをたるませる方向に大きめに振ることにより、 ラインが横方向にたるみを作って着水させます。

3.カーブキャスト

ラインを右または左に湾曲させて着水させます。アップやアップクロスでキャス トする場合等、ポイントの真上にラインが落ちてしまうのを避けたり、ラインよ りフライを先に流すために使います。

サイドキャストぎみにフィニッシュを行い、フライをターンオーバーさせること で簡単に実現できます。但し、リーダーが長い程・リーダーが細い程・ティペッ トが長い程難しくなりますが、フォルスキャストのループを狭く作ることで解決 することができます。

4.リーチキャスト

名前の通りリーチを利用して、フィニッシュ時のライン着水直前に腕を横に伸ば して着水位置を変えます。
スタンスに制限がある場合や、流れをクリアするテクニックとして使われます。

5.ピックアップ&フィニッシ

ラインを下流へ流し、ピンと伸びきってテンションがかかった時点でピックアッ プを行い、そのままフィニッシュを行います。
バックキャストもフォルスキャストもできない、トンネル状となったポイントを 狙う場合に使われます。

6.スティープルキャスト


バックキャストを空に突き刺すように高く行い、背後の障害物をクリアします。 特に葦原や護岸帯の中等で多用されますが、反面バックが高くなるということは フォルスキャストが下がることになりますので、せっかくのポイントをラインで 叩いてしまう可能性もありますので注意が必要です。


 キャスティングの上達は釣り場では困難と思います。釣りは狩猟本能がある程度の釣 果に貢献しますので、渓流での鱒釣経験があると魚がヒットします。少しでも魚が釣れ てしまうと、どうしても釣果に気がとられてキャスティング練習には集中できなくなり ますので魚の釣れない場所で練習することをお奬めします。
 また、上級者にレッスンを受ければ飛躍的にテクニックが向上します。但し、釣り場 以外での練習で得られるのは、障害物のない場所でのラインコントロールでキャスティ ング基礎となります。
 ある程度思い通りにラインをコントロールして、狙った場所に確実にフライが落とせ るようになったら、応用編を「川と魚に教わる」のが良いと思います。

 釣り場で、ここでのキャスト方法は??? なんて考えて釣りをしないと思いますし 障害物等をクリアする為には、そのフィールドに最適なスタンスとキャスティングフォ ームとならざる得ないので、狙ったポイントを攻略するテクニック向上には、数多く釣 りをして、多くの魚達と遊ぶことが大切です。


【5】 渓流の攻略


 渓流はご存知の通り「落ち込み」「巻き返し」「淵」「瀬」という4要素が交互に点 在して形成されています。そして規模が小さい川ほどその要素の間隔が狭まりポイント が小さくなり、フライが自然に流れてくれる距離が短くなります。

 渓流でのドライは、瀬の攻略が釣果に大きな影響を与えることから、面の釣りではな く点と線の釣りといえます。ポイントの多くが鏡と呼ばれるピンポイントであり、ここ に正確にフライを落とした数秒が勝負となるわけです。
 かたちの整った「いかにも大物が居そうなポイント」は、必ずだれかが釣っているの で、ここを拾い釣りしても釣果は上がりません。

 そこで、ポイントを絞りきれない「瀬」を攻める訳ですが、この場合穏やかな流れで のテクニックはでは歯がたちません。流れは複雑でドラグが掛かりやすく、フライが沈 みやすいために、確実にポイントにフライを落とすこととフィニッシュ後のラインコン トロールが重要となります。

 私の場合、ヘビーテーパー・ショートリーダー&ショートティペットという現在のド ライタックルとは逆のアンバランスなリーダーシステムで釣りをしています。  これは、ヘビーテーパー・ショートリーダーを使うことでターンオーバーが容易とな りますし、ティペットはキャスト時のフライをソフトに着水させるためだけに細めにす ることによって、ドラグがかかりにくいという理由からです。

リーダー :5x7ft1/2のティペット部分を3ftカット

ティペット:6x1ft


 これは渓流の場合で、里川や大川ではロングリーダー&ロングティペットとなります ので、全てのフィールドで通用するリーダーシステムではありませんので注意して下さ い。

 瀬に付いている鱒は、想像以上にセレクティブではないし、フライに対する反応もた いへんに早いし、流れが騒がしいので気配にも鈍感で、フライで釣るにはたいへん楽な 環境と私は感じています。但し不用意なウェーディングは禁物です。
 釣り方は、岸からウェーディングをしない場合はアップクロスまたはクロスでの攻略 で、ポイントまでの距離は長くても5ヤード程度を目安とします。ウェーディングした 場合はアップクロスまたはアップ&カーブで釣ることになり、特にアップでのキャスト は10ヤード程度のミディアムキャストが可能となります。
 瀬の場合も瀬頭と瀬尻の流速は瀬中より早いので、瀬尻にラインを漬けずにホールデ ィングすれば瀬頭から瀬尻直前までを一気にドラグフリーでフライを流下させることが できます。またピックアップも完全にフライが流れきってから行うように心がけます。
 ポイントの真上を通らないように注意してフォルスキャストを行い、スラック&リー チにて瀬の対岸にあるポイントの上へプレゼント、可能な限りドラグフリーでフライを 流し、ドラグがかかる前にラインにテンションをかけて疑似ナチュラルドリフトでポイ ントを通過させる。
 ポイントの鏡にさしかかった時、水面を割ってヤマメが! ストライク!
てな具合になるわけですね。

 いずれにせよ、渓流でのキャスティングは「ロングキャスト」での遠投テクニックで はなく、ショートキャストでの「トリック&コントロール」が重要です。


【6】 大川&里川での攻略


 里川は一般に「護岸帯」「低堰堤の連続」「平瀬」「岸辺に葦が密生」なんて状況が 一般的で、ハヤ・オイカワ等が混生しています。ここで、鱒だけを狙って釣るわけです から、相応のポイントを見極める目が必要となります。
 美味しいそうなポイントでも、先にハヤやオイカワが釣れてしまうと、もう鱒達は顔 を出してくれません。特に大型ほどその傾向が強く、一発目でヒットさせることが必須 条件と考えて下さい。

「ポイントの見極め」

 さて、里川のポイントは渓流のそれとは少し違ってきます。開きと呼ばれるポイント はハヤ一族が陣取り、流れてくるエサを心待ちにしていますので、そんなところにフラ イを流そうものなら結果は「ハヤがヒット!」でありましょう。

 狙い目は、流れに勢いがあり複雑な流れで、ハヤやオイカワが停位できない所という ことになります。そんな所には、大型のヤマメ(尺オーバー)が必ず停位していてロッ ドを満月にしてくれることでしょう。

 大川の例を挙げると、川は瀬頭・ガンガン瀬・平瀬・トロ場・ヒラキが約100mか ら200mに1サイクルで展開しています。ここでのポイントは瀬頭とガンガン瀬とな り、瀬頭の流心は白泡の流れですが、両サイドにある白泡の際が緩流となってヤマメが 付いていますし、ガンガン瀬では、点在する石の前後にできる鏡や巻き返しがポイント となります。
 それと超大物が狙えるのは、ガンガン瀬と平瀬の境界部分でありポイント最大の鱒が 付く場所なのですが、ウェットやストリーマでは容易なのですがドライではたいへん攻 略が難しいポイントです。どうしても流れに浮かせるドライは、複雑かつ強い流れに負 けてしまいます。

「アプローチのしかた」

 アプローチは渓流のそれよりも重要になります。渓流と比べると流れが平坦で穏やか なために、不用意なウェーディング等により想像以上の範囲にプレッシャーをかけるこ とになります。そのため、ウェーディングは極力避けることが釣果UPに大きな影響を 与えます。
 また、岸の石を転がしたり、木の枝を揺らしたり、ブッシュをガサガサかき分けるこ とも避けるべきです。

 渓流とは反対に、ここに立ちたいと思った場所から3歩さがってスタンスをとるべき と思います。 水面が穏やかであれば、想像以上に鱒の視野が広く「まさか!」と思う 範囲までしっかり見ているものですからね。

「フライのプレゼント」

 アプローチを考えると、キャスティグはある程度の距離を確保する必要があります。 しかし、雑誌等に書かれているような20ヤードを越えるロングキャストは必要ありま せん。なんせ流れのある川ですから、ロングキャストによってドラグがかかる等の弊害 が多いように感じています。

 フライをプレゼントする場合は、一見ひとつしかないポイントに見えても、流れの変 化や沈石等のよって複数のポイント(ヒッティング・ポイント)が存在しているので、 下流方向の岸寄りから順にフライを置いていきます。この場合も、石の手前、石の上流 石の向こう側と順番にプレゼントすることを心掛けると良いでしょう。


【7】 最後に
 ドライでおもうように釣果が上がらないのは「アプローチ」が大きなウェイトを占め ていますので、服装・歩き方・キャスト・ウェーディングの何れかに問題があると考え られます。全てに繊細に気を使い、かつ大胆に攻めることを心がけると良いでしょう。  必要最低限の距離を憶え、必要最低限のフォルスキャストで釣りができるテクニック を磨き、目立たぬ服装で、木バケ石バケ薮バケすればきっと思い通りの釣果が上がりま す。
 フライのパターンに魚が反応するより、自然な流下に魚は反応します。それは、「人 の気配がなくて、流れのままに流れるフライに反応する」ということです。


(注)上記マニュアルは執筆者朝倉さんに帰属し、作者の了解無しに他へ転載することを禁じます。


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