1.入札の手順について   

不動産の競売
地方裁判所では,債務を弁済することができなくなった人の所有する不動産等を差し押さえて, これを売却し,その売却代金を債務の弁済に充てる手続をとっており, これが不動産の競売(裁判所では「けいばい」と呼んでいます)です。

競売事件の特殊性
裁判所では,不動産を差し押さえ,登記所(法務局)に対し,その登記を嘱託しますが,当該物件の管理をしているわけではなく,この差し押さえによって,所有者の不動産を使用する権原が制限されているわけではありません。買受けを希望される場合でも,売却物件の内部等を見ることは,ほとんどの場合には認められませんので,裁判所に備え置かれる物件ファイルの写真等で判断していただくことになります。
裁判所の競売手続においては,不動産業者の方が扱う場合のような手続(サービス)は行われず,落札後の諸手続等も買受人が自らこれらを行う必要があること,物件に占有者がいる場合や境界等が不明な場合があることから,最低売却価額については,通常の取引価格よりも3割程度安い価格で決定されています。
そのほか,落札後に残代金を裁判所に納付されると,当該物件の所有権は買受人に移転されますが,前所有者等との立ち退きを含めた交渉等は,引渡命令に関するもの以外については,買受人において行わなければなりません。ここには,必要最小限の注意事項等を掲載してありますが,競売全般の手続において,不明な点については,地方裁判所の競売係にお尋ねください。

不動産の選択

<期間入札>
  裁判所が1週間以上1か月以内の範囲で入札期間を定め,その期間内に入札を受け付け,別に定めた開札期日に開札を行って最高価買受申出人を定める方法です。

<期間入札の公告>
  期間入札の方法により売却される不動産については,入札期間が始まる日の2週間前までに裁判所の掲示板(そのほか市町村役場等の掲示板に掲示される場合もあります。)に公告が掲示されます。 公告には,売却される不動産,入札期間,開札期日が開かれる日時,場所,不動産の最低売却価額,買受けの申出に際し,提供しなければならない保証の額や提供方法等,売却についての重要な事項が記載されています。買受けを希望される方は,この公告を見て,自分の買い受けたいと思う不動産を選択してください。

不動産の調査

<調査の方法>
  買いたいと思う不動産が見つかったら,次に,その不動産についてよく調査してください。裁判所では,そのために物件明細書,現況調査報告書,評価書という三つの書類の写しを,入札期間が始まる日の1週間前までに備え置き,誰でも見ることができるようにしてあります。
これらを見れば,不動産の現況と,それをめぐる法律関係のあらましがわかるようになっていますが,これらの書類は,あくまでも参考資料であることを心得ておいてください。

<物件明細書>
  物件明細書には,その不動産を買い受けたときに,買い受けた人がそのまま引き継がなければならない賃借権等の権利があるかどうか,土地が建物だけを買い受けたときに建物のために地上権が成立するかどうかなどが記載されています。

<現況調査報告書>
  現況調査報告書には,土地の現況地目,建物の種類や構造等,不動産の現在の状況のほか,不動産を占有している者の氏名やその者が占有する権原を有しているかなどが記載されており,不動産の写真等が添付されています。

<評価書>
  評価書には,不動産の評価額,周囲の環境の概要等が記載されており,不動産の図面等が添付されています。

<最終的な調査,確認>
  大きな買物をするわけですから,買受申出をしようとする場合は,現地に行って自分の目で物件の外観をよく見るほか,登記所(法務局)などへ行って権利関係を確かめるなど,必ず,自ら調査,確認することが大切です。
調査,確認が困難な場合や,権利関係が複雑な場合には弁護士に相談されるとよいでしょう。

買受けの申出

<入札の方法>
  入札をしようとする人は,執行官から入札書用紙と封筒を受け取り,これに必要事項を記入します。期間入札では,多数の不動産についての入札を同時に行うことが普通ですから不動産を取り違えないよう注意してください。
入札価格は,公告に記載された最低売却価額以上でなければなりません。
入札の方法は,入札書を執行官に直接差し出す方法と,入札書を執行官にあてて郵送する方法とがあります。執行官に直接差し出す場合には,入札書を封筒に入れて封をし,その封筒に開札期日を記入した上で,入札期間内に差し出してください。
郵送で入札する場合には,入札書を入れて封をし,開札期日を記入した封筒を,更に別の封筒に入れ,執行官にあてた書留郵便で入札期間内に届くように送付してください。
入札期間を過ぎてから到着したものは無効となります。
いったん提出した入札書は,訂正したり取り消したりすることができません。

<保証の提供>
  入札をするときは,同時に,保証を提供しなければなりません。その額は,通常は不動産の最低売却価額の20パーセントですが,それ以上のこともあります。保証の額も公告に記載されています。保証の提供は,次のいずれかの方法でしなければなりません。
第1は,入札する前に,裁判所の預金口座に,最寄りの金融機関から保証の額に相当する金銭を振り込み,金融機関の領収印のある保管金受入手続添付書(振込依頼書の第2片)を入札保証金振込証明書の用紙に貼ってこれを入札書とともに提出する方法です。この場合,振り込まれた金銭が入札期間内に裁判所の預金口座に入金済みにならないと入札は無効ですから,なるべく「電信扱い」として,早めに振り込んでください。入札保証金振込証明書と振込依頼書(3連複写式)の用紙は,入札書用紙とともに執行官室に備え置かれています。
第2は,銀行,損害保険会社,農林中央金庫,商工組合中央金庫,全国を地区とする信用金庫連合会,信用金庫又は労働金庫と支払保証委託契約を締結して,その証明書を提出する方法です。この方法は,銀行等が支払保証委託契約の締結に応じてくれることが前提となりますから,まず,銀行等と相談してください。

<開札>
  入札期間が終わると,あらかじめ公告されていた開札期日に開札が行われます。
開札は,裁判所内の売却場で執行官が入札書の入った封筒を開封して行われ,入札した人のうち最も高い価格をつけた人が「最高価買受申出人」と定められます。
その人の提供した保証は,そのまま裁判所が預かりますが,その他の入札人には保証を返還します。

所有権の移転手続

<売却許可決定>
  最高価買受申出人が決まると売却決定期日が開かれ,最高価買受申出人に不動産を売却するか否かを裁判所が決定します。最高価買受申出人が不動産を買い受ける資格を有しない場合などには,売却が許可されないこともありますが,普通の場合には,売却が許可され,最高価買受申出人は買受人となります。

<残代金の納付>
  最高価買受申出人に売却を許可する裁判所の決定が確定すると,裁判所は,代金の納付期限を定め,買受人に通知します。買受人は,定められた期限までに,最寄りの金融機関から裁判所の預金口座に金銭を振り込んで,金融機関の領収印のある保管金受入手続添付書を受け取り,それを裁判所に持参する方法など裁判所が指定する方法で代金を納付しなければなりません。
買受人が定められた期限までに代金を納付しないと,不動産を買い受ける資格を失い,提供していた保証の返還も受けられないことになります。そのため,入札をしようとするときは,入札後短期間のうちに代金全額を納付することができるように,取引のある金融機関などと相談するなどして,予め資金の準備をしておく必要があります。
なお,金融機関等が買受人へ融資を行うにあたり,抵当権の設定を希望する場合には,予め買受人と金融機関等が共同して,代金納付時までに書面で申し出てください。
代金が納付されると,不動産は買受人の所有となります。

<所有権移転の登記>
  代金が納付されると,裁判所は,登記所に対して,買受人に所有権の移転登記をするよう嘱託します。同時に,物件明細書に買受人が引き継がなければならないものとして記載された権利以外の不動産上の権利の登記を抹消するよう嘱託します。
前述の抵当権設定に関する申出があった場合には,裁判所書記官は,申出の際に指定された司法書士又は弁護士に嘱託書を交付して登記所に提出させる方法で嘱託します。司法書士又は弁護士がこの嘱託書と抵当権設定登記申請書を登記所に提出することにより,金融機関等の抵当権設定登記も同時に行われることになります。

<不動産の引渡し>
  所有権を取得した買受人は,自ら引き継がなければならない賃借権がある場合などを除き,不動産を占有している者に対して,引渡しを求めることができます。従前の所有者が任意に引き渡さないときなど,一定の場合には,代金を納付した日から6か月以内に引渡命令という裁判の申立てをすることができます。この裁判がされ,確定すると,執行官に申し立てて,従前の所有者等を強制的に立ち退かせることができます。

期間入札に関するお問い合わせ先

福島地方裁判所相馬支部執行官室
福島地方裁判所相馬支部競売係
0244-36-1874
0244-36-5141



2.入札に関する注意点   

入札の撤回等はできません
  競売事件における入札は,厳格な手続を守ることが要求されることから,入札の撤回や訂正等はできません。また,入札書を郵送する場合でも,入札期間内に到着しなかった場合には無効となるほか,封をしない入札書や開札期日の記載がないものなども無効となりますから注意してください。

当該競売事件の債務者は入札できません
  当該競売事件における債務者は,その事件について,買受けの申出をすることができません(民事執行法68条)。ただし,当該事件につき,債務者でない所有者(債務者兼所有者は買受けの申出ができない)は買受けの申出をすることができます。

所有権移転登記は,買受人(共同買受けを含む)名義にしかなりません
  買受人が代金納付をした場合,所有権移転の登記は,その買受人名義でなされます。代金納付までの間に,買受人が死亡し,相続開始があった等の特別な事情が生じた場合を除き,他の者の名義として移転登記を受けることはできません。
なお,夫婦などで共同して入札しようとする者は,あらかじめ執行官の許可を受け,入札に参加することができますが,その際には,許可を受ける際に明らかにした共同入札人間の持ち分に応じ,所有権の移転登記を受けることになります。

農地に関しては,買受適格の証明が必要です
  物件が農地とされる場合には,買受けの申出をすることができる者が制限されています(物件情報に☆印が付されているもの)。具体的には,物件所在地の農業委員会等から農地を買い受けることができる旨の証明書(買受適格証明書)の交付を受けた者に限り,買受けの申出ができることになります。

代金納付後,前所有者に対し,所有権移転等の通知は行いません
  代金納付と同時に,所有権は移転することになりますが,前所有者等に対しては,裁判所から期間入札の通知等をしている関係から,代金納付後,さらに,所有権移転の時期及び新所有者の住所,氏名などは通知されません。よって,代金納付後の引渡しの交渉に際しては,法務局で登記名義が変更された登記簿謄本などの交付を受け,前所有者にそれらを示しながら交渉する必要がある場合もあります。代金納付後,裁判所では速やかに登記の嘱託を行いますが,その移転登記がなされるまで,1週間ないし2週間(法務局や嘱託の時期によりその期間は異なります。)程度かかります。




3.特別売却について   

特別売却とは,期間入札により売却を実施しても適法な買受けの申出がなかった場合に実施される売却方法で,当支部の場合には,原則として,期間入札のあった月の翌月から3か月の期間を定めて特別売却が実施されます。
特別売却では,その期間内に最初に買受けの申出をした人に対し,その物件を売却することになります。
なお,特別売却を実施しても売却されなかった物件については,最低売却価額の見直しを行い,再度,期間入札の手続が実施されます。

特別売却に関するお問い合わせ先

福島地方裁判所相馬支部執行官室 0244-36-1874



4.福島地方裁判所の競売物件情報提供サービス

福島地方裁判所の本庁及び支部の競売物件情報が,いつでも(24時間)ファクスで取り出せます(物件に関する情報は定期的に更新されます)。

福島地方裁判所本庁
福島地方裁判所相馬支部
福島地方裁判所白河支部
福島地方裁判所会津若松支部
福島地方裁判所郡山支部
福島地方裁判所いわき支部

024-535-8881
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024-535-8881
024-931-1226
0246-24-2311

※競売物件情報提供サービスの操作手順については、上記番号へ電話した後、その音声ガイダンスに従って取り出してください。